【2025】行政書士法が改正されます

令和7年5月29日、衆議院総務委員会で「行政書士法の一部を改正する法律案起草の件」が採決され全会一致で可決されました。
この法律は今国会で成立し、施行日は令和8年1月1日とされています。なお、この記事は衆議院総務委員会YouTube、衆議院法制局HPを参考・引用させていただき執筆しています。
主な改正点は5つ
今回の行政書士法の主な改正点は5つです。
- 行政書士の使命
- 職責
- 特定行政書士の業務拡大
- 業務の制限規定の趣旨の明確化
- 両罰規定の整備
どの項目も非常に重要な項目ですが、行政書士からすると特に3の特定行政書士の業務拡大と4の業務の制限規程の明確化の項目が気になるところでしょう。
それではそれぞれの項目を詳しくみていきます。
恥ずかしながら・・・
そもそも行政書士法の一部が改正されるということを恥ずかしながらつい先日知りました笑。たまたまYouTubeを見ていたときに関連動画にあがっているのを見て知ったというのが本当のところです。
行政書士の使命
現行の行政書士法の第1条では(目的)となっていますが改正案では(行政書士の使命)と改められます。
改正案と現行法を比較してみましょう。(黄色マーカー部分の文言が変わっています)
改正案 | 現行法 |
---|---|
第1条(行政書士の使命) 行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続きの円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実施に資することを使命とする。 | 第1条(目的) この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適性を図ることにより、行政に関する手続きの円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実施に資することを目的とする。 |
第1条の(目的)から(行政書士の使命)に改正されることは非常に重要です。弁護士法や税理士法、司法書士法等では(〇〇士の使命)と第1条で規定されていますが、それと同じになったということです。
しかしながら、改正後の条文は「行政に関する手続きの専門家」という文言ではなく、「行政に関する手続きの円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し」と変わらずなのでその点が少し残念ですが、それでも(目的)から(使命)になったことは我々行政書士にとって大きな一歩です。俄然やる気が出てきました!
職責
職責は行政書士法で新設された条文です。
新設 |
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第1条の2(職責) 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。 2 行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展に踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るように務めなければならない。 |
まず1項のキモですが、「常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して」でしょう。
職務上請求書の不正使用、報酬だけ受け取り音信不通、申請書類や添付書類の虚偽作成、業際違反など、行政書士の不祥事を挙げたらキリがありません。
これは行政書士の母数が多いという理屈は通用しないと思います。と、偉そうに言っているワタクシも清廉潔白なんてものではなく、行政書士登録前は寧ろ叩けばホコリが飛び散るくらいでゴザイマス・・・。
ですので、私も含め、もう一度襟を正し、取り扱っている業務の専門性を高め、依頼者に不利益を与えないようにしようと思います。
2項では、年々進化する情報通信技術を総務省管轄であるあなたたち行政書士がもっと活用して依頼人の利益となるようにしなさい、ということですね。例えば、官公署や民間法人などが構築する電子システムを活用することは行政書士の業務にとっては非常に重要になります。
特定行政書士の業務拡大
今回の改正で最もわかりやすいアメの部分が「特定行政書士の業務拡大」です。
改正案 | 現行法 |
---|---|
第1条の4 二 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に関する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。 | 第1条の3 二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に関する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。 |
「作成した」から「作成することができる」に文言が変わっています。たった数文字の違いですが特定行政書士としてできる範囲が全然違ってきます。
これまでは行政書士が実際に作成した許認可申請のみに不服申立ができるとされてきましたが、改正案では行政書士が作成した許認可申請だけではなく、行政書士がまったく関与していない本人申請での行政庁による違法又は不当な処分や、不作為に対しても不服申立てをすることができるようになります。
つまり、許認可等に関する不服申立てのみの依頼を業務として引き受けることができるということです。
あまり取得してもメリットのなかった特定行政書士ですが、この改正によって特定行政書士が増加すると思われます。
業務の制限規定の趣旨の明確化
これは、非行政書士が行政書士の業務を代理した場合の制限規定が現行法よりも、より強く明確化されました。
改正案 | 現行法 |
---|---|
第19条(業務の制限) 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない。 | 第19条(業務の制限) 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第1条の2に規定する業務を行うことができない。 |
改正案を見ると、現行法にはない「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されています。
何屋さんとは言いませんが、「行政書士にお願いするより自分でやったほうが早いし、警察も役所も何も言わないし、代わりに申請して別の料金にちょっと上乗せしちゃえ」というようなことはワタクシの周りでもよくありますし、よく聞きます。
改正案は根本的な部分は変わっていなくて有償独占のままですが、ただ官公署に対しては少しでも圧力になると思われますので、対面チェックが厳しくなると期待しています。
両罰規定の整備
今回の改正案では両罰規定が適用される違反行為が増えました。
改正案 | 現行法 |
---|---|
第23条の3 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第21条の2、第22条の4、第23条第2項又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。 | 第23条の3 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第一号の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。 |
現行法での両罰規定は、(調査記録簿の記載等)の規定に違反したその行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の罰金刑に科することとなっていますが、改正案では(業務の制限)、(名称の使用制限)、(帳簿の備付及び保存)、(調査記録簿の記載等)、(立入検査)の規定に違反した行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する、に改正されます。
やはり行政書士法人が増えてきたことと、加えて上記の違反が多いことが今回の改正に繋がったのでしょうか。
まとめ
ここまで令和7年に改正される行政書士法に関してダラダラと書いてきましたが、改正後は今よりさらに行政書士としての品位と責任を再確認させるような改正案だな、と思いました。
特定行政書士の業務拡大については、特定行政書士に挑戦してみようと思うような改正案になっていますね。行政書士が関与していない許認可申請に対しても不服申立ができるというのは業務の幅が広がる反面、依頼者に対する責任も重大になります。ですので、さらに法律知識や業務の専門性を高めていかないとですね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
プロフィール

- 行政書士
- 平成23年度行政書士試験合格。10代の頃から建設業界で職人として働き、試験合格後も一人親方として現場で10年働き続け、令和4年5月に行政書士登録、 独立開業。初めて受任した業務が風俗営業1号許可申請。その後も風俗営業許可申請業務を多く経験し、現在は専門業務として活躍中。地元は灘のけんか祭りで有名な白浜地区。宇佐崎村で毎年祭りに参加。
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