「スナック」「ガールズバー」「コンカフェ」の営業で風営法違反とならないためには?

女性バーテンダー

少し前に、コンセプトカフェで女性スタッフの客に対する接待行為で風適法違反で摘発されたというニュースを見ました。

ここ姫路でも限りなく黒に近いグレー(最早アウト)なお店もちらほら存在しています

この記事では、これからスナック、ガールズバー、コンカフェなどを開業しようとお考えの方や、すでに営業されている方にどのような営業内容では許可や届出が必要なのか、または風営法違反となってしまうのか、ということをお話していきたいと思います。

基本は飲食店営業許可だけでOK

客に飲食物を提供して営業する場合は「飲食店営業許可」が必須になります。たとえソフトドリンクとお酒しかメニューにない場合でも飲食店営業許可は必要です。

飲食店営業許可は比較的短期間で取得できますので他の法令で定めらている許可や届出が必要ない場合はオープンの約1ヶ月前くらいに申請しても間に合います。

申請先は保健所になります。

飲食店営業許可申請での必要書類
  • 許可申請書
  • 施設の平面図
  • 施設周辺の概略図や見取り図
  • 食品衛生責任者の資格を証する書類(確認後返却されます)
  • 法人登記事項証明書(法人申請の場合に直近6ヶ月以内のもの)
  • 親権者の同意書(未成年が申請する場合)
  • 申請手数料16,000円(兵庫県の場合)

上記の必要書類を保健所に提出し、その後施設内検査が完了すれば飲食店営業許可証が交付されます。

風俗営業に該当する場合は許可が必要

前項で、基本は飲食店営業許可のみで営業できるとお話ししましたが、その営業内容が風俗営業に該当する場合は風俗営業許可を受ける必要があります。

風俗営業には、1号〜5号までの営業があり、風営法において性風俗関連特殊営業とは用語の意義で明確に分けられています。

1号〜5号営業はエンターテインメントビジネスアミューズメントビジネスの一種であり、性風俗関連営業はアダルトビジネスの一種といえます。

許可の区分営業の種類店舗の例説明
1号許可キャバレー、料理屋、社交飲食店キャバクラ、クラブ、ラウンジなど客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
2号許可低照度飲食店照明の明るさが10ルクス以下のバー、喫茶店など照度が10ルクス以下の客席において客に飲食をさせる営業
3号許可区画席飲食店1つの客室が5㎡以下のネットカフェ、居酒屋、バーなど見通しが困難な客席(広さが5㎡以下のもの)において客に飲食させる営業
4号許可まーじゃん店、パチンコ店雀荘、パチスロ店など客に射幸心をそそるおそれのある遊戯をさせる営業
5号許可ゲームセンターゲームセンター、カジノバー、アミューズメントカジノスロットマシン、テレビゲーム機その他の遊戯設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊戯に用いいることができるものを備えて客に遊戯を指せる営業

この内、1号〜3号までが「接待飲食等営業」に該当し、4号営業、5号営業は「遊技場営業」と呼ばれます。

接待行為があれば1号営業許可が必要

スナック、ガールズバー、コンカフェと似た営業にはラウンジクラブキャバクラなどがありますこの3つの営業は1号営業に該当し、接待飲食等営業の中でも「社交飲食店」に分類されます。

そして、1号許可に該当するかどうかは、「客に対する接待行為」があるかどうかで判断されます。

接待行為とは?

「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」

漠然としていてわかるようでわからない言葉ですが、要は店側が積極的に客をもてなして楽しませることです

クラブやキャバクラに客として行くと、ボックス席に案内されお店側が女性キャストを連れて隣に座らせてくれます。そして、特定少数の客に対して継続して話し相手になってくれたり、酌などをしてくれますがこの行為が接待行為に該当します

よく聞く話として「隣に女性が座らなかったら接待行為にならない」や、カウンター越しで特定少数の客と継続的に話すだけなら「接待行為」に当たらない、なんて言う人もいますよね?

ですが残念ながらカウンター越しかどうか、隣に座るかどうか、同性か異性かは関係なく、営業者側が積極的に継続して特定少数の客の話し相手になっていればその行為は「接待行為」となります。

ですので、このような行為をスナックやガールズバー、コンカフェでしていると無許可営業となってしまいます

接待行為は風俗営業1号許可のみに認められます

注意

メイドカフェなどでは従業員が客の口元まで飲食物を差し出して飲食させる行為は接待行為に当たり、風営法違反になってしまうので注意が必要です。

接待行為に当たる例と当たらない例
  • 談笑・お酌等
    特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に当たる。
    これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。
  • ショー等
    特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為は接待に当たる。
    これに対して、ホテルのディナーショーのように不特定多数の客に対し、同時に、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為は、接待には当たらない。
  • 歌唱等
    特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやす行為又は客と一緒に歌う行為は、接待に当たる。
    これに対して、客の近くに位置せず、不特定の客に対し歌うことを勧奨し、又は不特定の客の歌に対し拍手をし、若しくは褒めはやす行為、不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為又は歌の伴奏のため楽器を演奏する行為等は、接待には当たらない。
  • ダンス
    特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為は接待に当たる。また、客の身体に接触しない場合であっても、特定少数の客の近くに位置し、継続して、その客と一緒に踊る行為は、接待に当たる。
    ただし、ダンスを教授する十分な能力を有する者が、ダンスの技能及び知識を修得させることを目的として客にダンスを教授する行為は、接待には当たらない。
  • 遊戯等
    特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為は、接待に当たる。
    これに対して、客一人で又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為は、直ちに接待に当たるとはいえない。
  • その他
    客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為は、接待に当たる。ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は、接待に当たらない。
    また、客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為も接待に当たる。これに対して、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、コート等を預かる行為等は、接待に当たらない。

女性バーテンダーの接待行為

ガールズバーとコンカフェの違いなどで調べてみるとガールズバーは女性が接客してくれるバーで、会話が楽しめると説明しているサイトもありますが、このような営業内容では風俗営業許可が必要です

【風俗営業許可】許可証取得までの工程と流れ

兵庫県姫路市で風俗営業許可専門の行政書士熊野立樹事務所に風俗営業許可申請手続きの代理をご依頼いただいた場合の打ち合わせから許可証交付までの業務の流れを詳しく説…

店内を暗くして営業する場合は2号営業許可が必要

コンセプトカフェなどではお店のコンセプトで常時店内を暗くして営業する場合もあるでしょう。そのような営業では「低照度飲食店」の許可を受ける必要があります。

2号営業(低照度飲食店)

喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの

2号営業(低照度飲食店)許可では1号営業(社交飲食店)許可のような接待行為はできませんが、不特定の客に対する遊興行為は行うことができます。

遊興行為とは?

営業者側の積極的行為によって不特定の客に対して遊興させる行為です。例えば、ゲーム大会やライブ、不特定の客に対して応援や声援を呼びかける行為のことです。お店で定期的に開催するイベントなどは遊興行為に該当します。

もし風営法に違反しないようにするためには店内の照度を10ルクス以上に保つようにしてください。

ゲーム機等を置く場合は5号営業許可が必要

ここでいうゲーム機とは5号営業(ゲームセンター)の規制の対象になっている遊戯設備のことです。例えば、ポーカー台やルーレット台、スロット、テレビゲームなどの遊戯設備は風営法の規制の対象になっています。

このような遊戯設備を店内に設置する場合は5号営業(ゲームセンター)許可を受けて営業する必要があります。なお、ビリヤードやデジタルダーツなどは規制の対象になっていないので店内に設置していても風営法の規制は受けません

午前0時以降も営業するなら届出や許可が必要

深夜(午前0時〜午前6時まで)に客に酒類を提供して営業する場合は届出や許可が必要です。

【風営法】営業地域や種類による営業時間の違いは?

弊所はよくご依頼いただいたお客様のお店に飲みに行ったりするのですが、お邪魔する時間が遅いとラストまでお店にいるときがあります。 そろそそ閉店時間だし、お暇しよう…

深夜酒類提供飲食店営業

引き続き深夜(午前0時以降)にお酒を提供して営業をするのであれば、深夜酒類提供飲食店営業開始の届出が必要です。こちらは風俗営業許可とは違い、営業開始の10日前までに届出をすれば営業できます。

ラーメン店や牛丼店のような主食をメインに提供しているお店はたとえお酒を提供していても届出は必要ありませんが、スナックやガールズバー、コンカフェでは主食をメインに提供しているとはいえませんので深夜酒類提供飲食店営業の届出は必要になります

深夜酒類提供飲食店営業では風営法の規制がいくつか適用されますので注意してください。

飲食店の深夜営業を始める前に!深夜酒類提供飲食店営業開始届出の完全解説

この記事では、深夜にお酒をメインに提供して営業しているお店の方に、どのようなお店で深夜酒類提供飲食店営業開始届出が必要なのか、無届営業の危険性、届出のやり方、…

特定遊興飲食店営業許可が必要な場合も

スナック、ガールズバー、コンカフェで風営法違反となるのは大体1号営業許可が必要な「接待行為」を行っていることで警察に摘発されています。

ですが、接待行為を行っていない場合でも「深夜」「酒類を提供」して、「不特定の客に遊興行為」をさせる営業は「特定遊興飲食店営業許可」が必要になります。

上記のマーカーのとおり、特定遊興飲食店営業許可が必要な営業内容は以下に該当した場合です。

  1. 深夜(午前0時以降)に営業していること
  2. 客に酒類を提供していること
  3. 営業者側が積極的に不特定の客に対して遊興させていること

この3つの要件すべてに該当する営業は「特定遊興飲食店営業許可」が必要です。

スナックやガールズバーではあまり必要のない許可ですが、コンカフェやコンセプトバーなどで深夜にお酒を提供して定期的にイベントなどを開催していれば許可が必要になります。

この場合、細かな営業内容で低照度飲食店と特定遊興飲食店の許可がそれぞれ絡み合うことがあります。もし営業のコンセプトが低照度飲食店営業に該当していれば深夜に営業はできません。逆に特定遊興飲食店営業に該当していれば店内の照明を10ルクス以下にすることはできなくなります。

遊興に関しては、低照度飲食店では午前0時まで、特定遊興飲食店では引き続き午前0時〜午前6時まですることができます。

このように、コンカフェなどはコンセプトや営業内容が様々なので慎重に許可や届出を検討することになります。

特定遊興飲食店営業とは?許可が必要な営業と許可の取り方を詳しく解説

特定遊興飲食店許可は、平成27年の風営法の法改正で登場した比較的新しい許可制度です。改正前は「客にダンスをさせる」という行為そのものに着目して風営法の規制の対象…

客引き行為は絶対ダメ

風俗営業では客引き行為は禁止されています。また、風俗営業に限らず、都道府県の迷惑防止条例でも客引きは禁止されています。

繁華街を歩いているとスーツを着たお兄さんが「お店はもうお決まりですか?」とか「安いお店紹介しますよ」など声を掛けてきたりすることがあります。少し声を掛けられる程度で、立ちふさがれたり付きまとわれたりしないので客引きではないのですが、顔を合わす度に声を掛けられるのは正直面倒くさいです。

この客引き行為ですが、当然スナックやガールズバー、コンカフェでも違法になります。

路上でのビラ配りもダメ?

お店の宣伝をするためにビラや広告を配るのは客引き行為には該当しません
ただ、その際にしつこくお店に来るよう強要したり、立ちふさがって進路の妨害をしてしまうと客引き行為になってしまいます

結局お店の営業内容で許可や届出が必要になる

結局は、スナック、ガールズバー、コンカフェというお店のカテゴリーではなく、お店の営業内容で許可や届出が必要になるか決まります

許可・届出の種類営業内容
飲食店営業許可客に酒類や飲食物を提供する場合に必要。
風営法1号営業許可(社交飲食店)お店側が積極的に客に対して接待行為をする場合は必要。営業は原則午前0時まで。営業時間内は接待に加えて遊興行為もOK。
風営法2号営業許可(低照度飲食店)店内の明るさを10ルクス以下にして営業する場合は必要。営業は原則午前0時まで。営業時間内は遊興行為はOKだが接待行為はNG。
風営法5号営業許可(ゲームセンター)店内に風営法で規制されている遊戯設備を設置する場合は必要。営業は原則午前0時まで。営業時間内は遊興行為はOKだが接待行為はNG。
深夜酒類提供飲食店営業深夜(午前0時〜午前6時)に酒類を提供する営業は必要。午前0時までは遊興行為はOKだが午前0時以降はNG。接待行為もNG。
特定遊興飲食店営業深夜(午前0時〜午前6時)に酒類を提供して客に遊興行為をさせる場合は必要。接待行為はNG。
注意

風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業届、特定遊興飲食店営業許可は原則併用できません。

きちんと営業内容に合った許可や届出を取得するようにしましょう。

まとめ

今回は、スナック、ガールズバー、コンカフェの営業と風適法違反について詳しく解説してきましたが、時代も急速に変化しており、まだまだ新しい形態の飲食店もオープンしています。

ここ10年では風適法が改正され、特定遊興飲食店営業という許可も新設されました。

その反面、営業内容も複雑になりどのよな営業内容ではどのような許可や届出が必要か、ということも曖昧になってきています。

経営者の方にとって風適法や関係法令をすべて把握するのは難しいですが、風俗営業専門の行政書士と窓口を作っておけば、お店の営業内容や経営のことなどで疑問に思ったことを相談したり許可や届出もすべて任せることができます。

弊所でも風俗営業を専門業務にしていますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。

ここまで見てくださり、ありがとうございました。

お気軽にお問い合わせください。050-3551-1110受付時間 9:00-18:00 [ 土・日・祝日除く ]

メールでのお問い合わせ お気軽にお問い合わせください。

プロフィール

Tatsuki Kumano
Tatsuki Kumano行政書士
平成23年度行政書士試験合格。10代の頃から建設業界で職人として働き、試験合格後も一人親方として現場で10年働き続け、令和4年5月に行政書士登録、 独立開業。初めて受任した業務が風俗営業1号許可申請。その後も風俗営業許可申請業務を多く経験し、現在は専門業務として活躍中。地元は灘のけんか祭りで有名な白浜地区。宇佐崎村で毎年祭りに参加。