飲食店の深夜営業を始める前に!深夜酒類提供飲食店営業開始届出の完全解説

飲食店で、深夜(午前0時〜午前6時)も引き続きお酒をメインに営業をするためには「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」という届出が必要です。
ですが、意外と飲食店営業許可のみで深夜営業をしているお店が多く、その理由は「費用がかかるから」、「深夜酒類提供飲食店営業開始届出の存在自体知らない」、「深夜営業の届出をしていなくても摘発されることはない」との理由で届出をしていないお店が少なからずあります。
それらの理由で深夜営業の届出をせずに営業しているのは非常に危険です。
そこでこの記事では、深夜酒類提供飲食店営業開始届出の存在の周知、届出のやり方、無届営業の危険性などを詳しく解説していきたいと思います。
目次
どのようなお店で深夜営業の届出が必要?
深夜(午前0時〜午前6時)に営業するお店すべてが届出をしないとダメなのか?というとそういうわけでもありません。
深夜営業の届出が必要になる営業形態は、深夜(午前0時〜午前6時)にお酒をメインに提供するお店が届出の対象になります。
つまり、主食(炭水化物など)をメインに提供するお店は深夜酒類提供飲食店営業開始届出(以下深夜飲食店営業届出)の対象になりません。
主食がメインのお店とは、
- 牛丼店
- ラーメン店
- うどん店
- パスタ店
- お好み焼き店
- ピザ店
などなど、その他にもありますが、主に上記のような営業のお店はお酒も提供しますが主食がメインなので深夜営業届出から外れます。
「ウチの居酒屋メニューに牛丼やうどん、ピザなどを入れれば深夜飲食店営業の届出は必要ないやん」と思われる方もいるかもしれませんが、そこはそんなに甘くはないんですよね。
居酒屋さんは上記のようなメニューがあったとしても、あくまでお酒とお酒に合う肴を提供するのがメインなので深夜飲食店営業の届出は必要なのです。
居酒屋さん以外にも深夜飲食店営業届出が必要な営業にはバー(ショットバー、ガールズバー、コンセプトバーなど)や接待行為のないスナックなどがあります。
深夜営業届出と風俗営業許可の違い
弊所にガールズバーやスナック開業のご相談をされた際に、
- 飲食店営業許可のみで営業できないのか?
- 風俗営業許可は必要なのか?
- 深夜も営業したいがどうすればよいか?
という質問をよくされます。
理論上は接待行為がなく深夜(午前0時〜午前6時まで)にお酒を提供しないのであれば風俗営業許可も深夜飲食店営業届出も必要なく、飲食店営業許可のみで営業できます。
が、
バーやスナックという営業は客にお酒を提供するのがメインのお店なので、たとえ深夜にお酒を提供しないとしてもまず警察は信用してくれませんし、客も文句を言ってくるでしょう。
そもそもお酒を提供しないのであればお店を開けておく意味はないですし、深夜に客の話し相手になっていれば風営適正化法違反になってしまう可能性もあります。
ですので、接待行為のないガールズバーやスナックが深夜にお酒を提供して営業するのであれば深夜飲食店営業届出が必須になります。
営業形態 | 接待行為 | 深夜の遊興行為 | 営業できる時間 | 必要な許可・届出 |
---|---|---|---|---|
深夜飲食店 | ✕ | ✕ | 午前6時まで | 深夜飲食店営業届出 |
社交飲食店 | ◯ | ✕ | 午前0時まで | 風俗営業1号許可 |
特定遊興飲食店 | ✕ | ◯ | 午前6時まで | 特定遊興飲食店営業許可 |
接待行為や深夜に遊興行為をするのであれば許可が必要
ガールズバーやスナックが風営適正化法違反で摘発される例では、無許可の接待行為によるものが大半を占めています。
接待行為とはなんぞや?というと一言でいえば「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」です。
例えば、ラウンジやキャバクラに行くと、指名したキャストがあなたのそばに付き添い、継続して談笑の相手をしてくれたり、お酒を注いでくれたりします。また、カラオケがあるお店では、一緒にデュエットをしてくれたり、手拍子をして盛り上げてくれたりします。
このような行為はすべて接待行為となり、風俗営業1号許可(社交飲食店)を受けないと無許可営業となり摘発の対象になってしまいす。
居酒屋さんや深夜にお酒を提供するだけのバーではこのようなお店側の接待行為はありませんが、ガールズバーやコンセプトバー、スナックでは度々無許可の接待行為が問題になり警察に摘発なんてこともあります。
ご自身が開業しようとしているお店に接待行為があるか、深夜にお酒を提供して遊興行為があるか、ということをよく考えて社交飲食店営業許可や特定遊興飲食店営業許可の取得も視野に入れておいてください。
接待行為については以下の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。
深夜飲食店無届営業の危険性
無届のまま営業を続けていた場合の危険性ですが、それは何か問題があったときに責任を負わなければならない可能性があるからです。
例えば、深夜にお酒を提供し、その後その客が交通事故や事件を起こした場合に当該深夜飲食店営業無届店の責任を追求されるかもしれません。
そのような事態になったときに、お店側の正当な理由を主張できるようにするためにも深夜にお酒をメインに提供して飲食店を営業する場合は必ず届出をしましょう。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出のやり方
深夜飲食店営業届出は営業開始の10日前までに営業所の管轄を所轄する警察署に提出します。
物件の契約や開業準備、飲食店営業許可も受ける場合は最低でも2ヶ月は余裕を持って準備するようにしてください。
営業制限地域の確認
深夜飲食店はどこででも営業できるわけではなく、用途地域によって営業できる場所が決まっています。
風俗営業許可と同じく兵庫県では以下の場所では営業することができません。
第 1 種 地 域 | 第1種低層住居専用地域 | 営業禁止地域 |
第2種低層住居専用地域 | ||
第1種中高層住居専用地域 | ||
第2種中高層住居専用地域 | ||
田園住居地域 | ||
第1種住居専用地域 | 営業禁止地域 ただし、風営適正化法施行条例施行規則第2別表に規定する道路の側端から30メートル以内の指定地域を除きます。 | |
第2種住居専用地域 | ||
準住居地域 |
営業しようとしているお店がどの用途地域に属しているかは、各自治体が用途地域情報のマップを提供していますのでスマホやPCで確認ことができます。また、役所の都市計画課でも用途地域の情報を確認することができます。
どうしてもよくわからない場合や、調べるのが面倒くさい場合は弊所のような風俗営業許可専門の行政書士に丸投げしましょう!
営業できない用途地域のままで届出をしても受理されないのでしっかり確認してから物件の契約や営業所の建築に着手してください。
深夜飲食店営業届出では保全対象施設はありません
深夜飲食店営業届出では、風俗営業許可のような保全対象施設からの距離制限というのはありません。保全対象施設からの距離制限というのは、保育所や学校関係、病院や診療所から一定の距離を確保していなければ営業が認められないという制限のことです。
店内の構造にも基準があるので注意
深夜飲食店営業では「営業所の技術上の基準」という規定が設けられていて、店内の構造をその技術上の基準に適合するようにしないといけません。
例えば、個室や座敷など、客室を2室以上設ける場合は1室の床面積が9.5㎡以上であることや、1メートルを超える衝立や仕切りを設けないことなどがあります。
深夜飲食店営業の詳しい技術上の基準はこちらをクリックまたはタップしてください。
(深夜における飲食店営業の営業所の技術上の基準)
e-Gov 法令検索
第九十九条 法第三十二条第一項の国家公安委員会規則で定める技術上の基準は、次のとおりとする。
一 客室の床面積は、一室の床面積を九・五平方メートル以上とすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない。
二 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
三 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備(第百二条に規定する営業に係る営業所にあつては、少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を含む。)を設けないこと。
四 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
五 次条に定めるところにより計つた営業所内の照度が二十ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
六 第三十二条に定めるところにより計つた騒音又は振動の数値が法第三十二条第二項において準用する法第十五条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
深夜飲食店営業は許可制ではなく届出制ですので構造検査(立入検査)は原則実施されません。※地域によっては構造検査(立入検査)を実施する警察署もあります。
ですが、図面類を作成しないといけないので店舗内を計測し、店舗内の構造や寸法を誤魔化さずに嘘偽りのない正確な図面類を作成してください。
必要書類の作成と添付書類の取得
深夜酒類提供飲食店営業開始届出に必要な書類は、風営適正化法および許可申請書の添付書類に関する内閣府令で規定されています。
- 届出書
- 営業の方法
- 配置図
- 求積図
- 音響・照明設備図
- 本籍地記載の住民票の写し(個人)
- 定款(法人)
- 法人登記事項証明書(法人)
- 役員全員の本籍地記載の住民票の写し(法人)
上記が法で規定されている深夜飲食店営業届出における必要書類です。その他添付書類の必要性については後述します。
届出書の記載例
届出書の書き方については下の画像を参考にしてください。

ご自身の住民票、建物登記事項証明書、賃貸契約書などを参考にしながら正確に記載するようにしましょう。
営業の方法の記載例
営業の方法の書き方は下の画像を参考にしてください。

営業の方法は、営業時間やお店のメニューなどを詳しく記載します。
提供する飲食物や酒類は、まだこの時点ですべて決まっていないかもしれないのでとりあえずのメニューを記載していればOKです。ただその場合でもできるだけ多くの品を具体的に記載してください。
図面類の作成
警察署に提出する図面は以下の3種類でOKです。
- 配置図
- 音響・照明設備図
- 求積図



どのような許可申請や届出でも、提出書類の難易度を上げているのがこの図面類の作成です。
図面を引けるスキルがないと作成できないので、風俗営業専門の行政書士に依頼するか、店舗が広く構造が複雑などの理由でより正確な図面を作成してほしい場合は、土地家屋調査士の先生に依頼しましょう。
また、手書きで丁寧に図面を作成すれば警察署の担当官によっては受け付けて貰える場合があるので一度問い合わせてみる、というのも手です。弊所の知り合いは手書き図面という力技で受け付けてもらえました。(何度も何度も補正させられたそうです。)
その他添付書類は必要か?
法律上は、以下の書類を提出すれば受け付けてもらえるはずです。
- 届出書
- 営業の方法
- 本籍地記載の住民票の写し(個人)
- 定款(法人)
- 法人登記事項証明書(法人)
- 役員全員の本籍地記載の住民票の写し(法人)
ですが、警察署に対する届出を含む許認可申請では、その警察署独自の添付書類を求めてきます。
多くの方は所轄警察署に問い合わせて必要な添付書類だけを提出していると思います。
確かに提出する添付書類が少なければ少ないのに越したことはありませんが、弊所の場合は出せる添付書類はすべて提出する、というスタンスで許可申請や届出業務をしています。
要は、深夜飲食店営業届出の場合、行政書士に依頼すると届出者と担当警察官は顔も合わすこともないですし、お店の検査も実施されないので警察や担当官としてもできるだけ多くの書類を提出してもらえる方が助かる、ということです。
以下に警察から求められる可能性の高い添付書類リストを書いておきます。
添付書類名 | 必要性 | 備考 |
---|---|---|
飲食店営業許可証のコピー | 大 | ほぼ必須 |
賃貸契約書のコピー | 中 | できれば提出した方がよい |
建物登記事項証明書 | 中 | できれば提出した方がよい |
システム料金・メニュー表 | 中 | ガールズバーやスナックは求められる場合が多い |
用途地域証明書 | 大 | ほぼ必須 |
営業所周辺見取図(位置図) | 中 | できれば提出した方がよい |
使用承諾書 | 低 | 賃貸契約書の貸主と建物登記事項証明書の所有者が同じなら求められることは少ない |
所轄警察署に届出をする
所轄警察署の取り扱いによって違いはありますが、届出では事前相談は必要ありません。届出の希望日と担当官の都合が合えば所轄警察署に届け出をするだけでOKです。
営業者本人が届出に行くと担当官からお店のことに関して少し聞かれるかもしれませんが、行政書士が代理で届出をする場合は特に何も聞かれず、「はい、受け付けました。」で終わります。
あくまで書類の不備や記載内容に不備がないことが前提ですが・・・。
届出が受理されると風俗営業許可申請と同じく「申請等受理書」という書面を発行してもらえます。

風営適正化法施行規則では、深夜飲食店は営業を開始しようとする日の10日前までに提出しなければならない、と規定されていることから、届出が受理されれば自動的に10日後から営業することができます。
深夜飲食店営業開始届出では飲食店営業許可証や風俗営業許可証的なものはないので特に何も掲示せずに営業していただいてOKです。
まとめ
今回は、未だ知名度の低い「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」について詳しく解説してきました。
深夜にお酒をメインに提供して営業するお店は必ず届出をするようにしましょう!
届出が面倒くさい方や警察が苦手な方は、弊所にすべて丸投げできますのでぜひご相談ください!
余談ですが、深夜酒類提供飲食店営業開始届出は、行政書士界隈では風俗営業許可申請の入門業務として捉えられているようです。
確かに風俗営業許可に比べれば比較的簡単な業務になりますが、知名度が低いゆえか弊所では圧倒的に風俗営業許可申請業務に関する相談や依頼が多いです。
若しくはご自身で届出をしているんですかねー。
それではここまで読んでいただきありがとうございました!
プロフィール

- 行政書士
- 平成23年度行政書士試験合格。10代の頃から建設業界で職人として働き、試験合格後も一人親方として現場で10年働き続け、令和4年5月に行政書士登録、 独立開業。初めて受任した業務が風俗営業1号許可申請。その後も風俗営業許可申請業務を多く経験し、現在は専門業務として活躍中。地元は灘のけんか祭りで有名な白浜地区。宇佐崎村で毎年祭りに参加。
最新の投稿
ブログ2025年4月6日飲食店の深夜営業を始める前に!深夜酒類提供飲食店営業開始届出の完全解説
ブログ2025年3月27日【風俗営業許可申請】構造検査ではどこを見られ、何を検査される?
ブログ2025年3月17日【飲食店営業許可】名義変更のやり方を詳しく解説
ブログ2025年3月11日【風俗営業】店名を変更したら届出が必要!